しわをとり、若返るにはどのような方法がありますか。
(毎日ライフ増刊号より)

東京大学形成外科美容外科 吉村浩太郎


 わが国は先進国の中でも随一の平均寿命を誇り高齢化社会が進んでおりますが、年齢を重ねても積極的に社会と関わっていく姿勢をお持ちの方はますます増えてきているようです。こうした中で、より積極的な自分を取り戻すために、加齢による外見の衰えを治したいとお考えになる方が増えてきています。医療の力を借りて顔のシワやシミをとり若返るためには、さまざまな方法があります。以下に順を追って、ご紹介したいと思います。

 まず、外科的に手術をして若返る方法です。年をとると、顔の皮膚と脂肪や筋肉の間のつながりがゆるくなり、重力によって下垂しタルミが出てきます。顎のラインや鼻唇溝(鼻の両側から口の外側に伸びる深いしわ)に、とくに目立ってきます。これらはフェイスリフトと呼ばれる手術によって皮膚の下の筋膜を吊り上げて余分な皮膚を切除して、大きなシワやタルミを目立たなくすることができます。耳の前や後ろ、髪の毛の中の皮膚を切りますので傷跡は目立ちません。額のシワをとる手術の場合は頭頂部の頭髪の中を切ります。あわせて、皮膚の下の余分な脂肪を吸引したり、顎の下の首のタルミをとることもあります。

 年をとると上まぶたが下垂してくることはよく見られます。下垂した上まぶたや上まぶたの皮膚のたるみも手術をして治すことができます。この場合は上まぶたの横しわにそって余分な皮膚を切ります。下まぶたの皮膚のシワや丸く垂れ下がったタルミも、目立たない下まぶたのふちを切って治すことができます。脂肪の少ない人の場合は脂肪注入をすることもあります。

 額などの筋緊張性の横ジワやカラスの足跡のような笑ったときにできる大きなシワは、筋肉を麻痺させるボツリヌス毒素を注射して治すことができます。この場合は、笑ったときでもその筋肉が動かなくなりますので、少し表情が変わります。3ヶ月から6ヶ月で薬の作用はなくなりますので、必要に応じて追加をすることになります。額の筋肉が緊張して生じている額の横ジワにも非常に効果があります。

 静止時にも明瞭な眉間や上くちびるの縦ジワなどには、コラーゲンの注射が良く使われます。簡単にできて腫れもわずかであるため、当日から普通の生活ができます。ただ、3ヶ月から6ヶ月程度で吸収されてしまいますので、繰り返し注射する必要があります。牛から取ったコラーゲンであるため、約3%の方にアレルギー反応がでますので、必ず注射の数週間前に皮内テストをしてアレルギーが起こらないことを確認する必要があります。最近は、テストの要らないヒアルロン酸や、吸収のないポリマーを配合した製品も登場してきました。今後も多くの新しい注射剤が開発されることでしょう。

 一方、小じわやちりめんジワなどにはスキンリサーフェシング(皮膚の表面を新しく再生させる意味)という方法があります。この場合は皮膚を敢えてモ削るモことになりますが、電気やすりで削る方法(アブレージョンといいます)、レーザーで削る方法、そして酸などの化学薬品で削る方法(ケミカルピーリング)があります。通常の生活のままで皮膚の張りを改善したい方には多少時間はかかりますが、レチノイン酸という外用剤で治す方法があります。

 高齢になるとシミも多くなりぶち模様になったり、皮膚も張りを失い、色も黄ばんできます。シミにもいろいろありますが、盛り上がってきたものは液体窒素やレーザーなどできれいに治すことができます。また、普通の平たいシミはレチノイン酸などの外用剤で治します。ハイドロキノンやコウジ酸などの漂白作用のある外用剤を併用して色素沈着を取っていきます。皮膚の色や張り、つやなどの若返り効果も期待することができます。老人性のシミであれば専用のレーザーを使って治療をする場合もあります。

 以上のように、シミ、シワ、小ジワ、タルミなどそれぞれの症状に応じて、多彩な美容治療を駆使することで外見的には10歳以上若返ることが可能です。こうした若返り治療に対する関心は高まる一方です。ただ、治療によっては、一時的な生活上の負担も伴いますので、専門の形成外科医、美容外科医によく相談されてお受けになるようにして下さい。もちろん、ご紹介した若返り治療には健康保険は適用されませんので、自費診療となります。

 

ボツリヌス毒素(BOTOX)治療の症例写真

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