Cosmetic in Japan 美容医学への扉-東京大学美容外科-アンチエイジング
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Web Master -Kotaro Yoshimura, M.D.-


脂肪幹細胞加脂肪移植術(Cell-Assisted Lipotransfer)による豊胸術

吉村浩太郎、松本大輔、佐藤克二郎


1.はじめに
脂肪注入移植法は遊離移植であるため生着や確実性に問題があるとされてきたが、採取部や移植部に瘢痕を残さず、自家組織で異物に伴う後遺症がない、皮弁移植に比べて形態形成の自由度が高い、侵襲が小さい手術である、などの利点があり、とくに美容的観点からは優れた治療法であり、近年施行数が急速に増加している。しかし、脂肪移植が抱える問題点は移植後の脂肪壊死に由来しており、技術的要因が治療結果に大きく影響するため、安定した結果が得られるような治療法の改良や標準化が必要である。
近年、脂肪組織の前駆細胞(間質血管細胞stromal-vascular cell、脂肪間質細胞adipose stromal cell)には多分化能を持つ細胞が含まれていることが指摘され[1]、脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cell: 以下ASC)とも呼ばれるようになった[2]。脂肪組織は大量に(>1L)採取することが可能であるため、骨髄に代わる新たな成人幹細胞源として注目されている。我々はこのASCを補助的に利用して、従来の脂肪移植法を改良した新しい治療法(Cell-assisted lipotransfer: CAL)を考案した[3]。本稿では、本治療法の基本概念、初期臨床研究の結果を報告する。

2. 吸引脂肪由来細胞群とは
脂肪吸引で採取される吸引物は、吸引瓶の中で二層に分離される。上層は、浮遊する吸引脂肪から成り、下層は吸引廃液である。この吸引廃液は、Tumescent液(生理食塩水、リドカイン、アドレナリンなど)、末梢血、組織破砕小片などからなる。この上層(吸引脂肪)、および下層(吸引廃液)の双方から酵素処理により間質血管細胞群(stromal vascular fraction [SVF]: 成熟脂肪細胞は除かれている)を採取することができる(図1)[4]。この細胞群は、血液由来細胞(白血球など)が半数程度を占め、残りはASCをはじめ、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞など脂肪組織由来細胞である。FACSで分析したSVFの細胞構成を表1に示す(血液由来成分=CD45陽性細胞は省いてある)。ASCは間葉系幹細胞(MSC)や皮膚由来線維芽細胞(DF)と形態的には酷似しているが、細胞表面抗原発現での一番大きな違いは培養ASCではCD34、CD105の発現が見られることである(図2)[4]。ASCは体内で血管内皮細胞に分化することも明らかとなり、生理的には脂肪と血管、双方の前駆細胞であると考え始められている[5]。

3. 吸引脂肪とは
吸引脂肪組織は細い金属カニューレで吸引されるため、大きな血管・神経や細胞外基質が正常脂肪組織に比べて少ない(図3)[3]。吸引脂肪からASCを採取すると、正常脂肪組織から採取した場合の半分程度(56±12%, n=4)の数しか回収できない(組織学的にもCD34陽性ASCは血管平滑筋の周囲に高密度に存在することを確認した)。吸引脂肪組織にASCが少ないことは、上記の大血管が乏しいことに加え、機械的な破砕や内因性の酵素反応などにより、吸引手術中や吸引瓶内での保存中にASCが廃液中に遊離されている可能性もある。吸引脂肪からASCが遊離されることは、吸引廃液からもASCが単離される[4]ことからも明らかである。組織内に前駆細胞が不足していることが、脂肪注入移植においての低生着率や移植後の脂肪萎縮の一因になっていると思われる。吸引脂肪を遠心処理(〜1200g)すると、吸引脂肪内の一部の脂肪細胞が破壊されるがASCは破壊されないため、組織内のASC/adipocyte比を改善することができる(1200gの遠心で約14%)9(図4)[6]。

4. 脂肪移植の現状と問題点
脂肪移植の利点は、@採取部にも移植部にも瘢痕を残さない、A自家組織移植であるため人工物に伴う後遺症がない、B有茎・遊離皮弁に比べて形態形成の自由度が非常に高い、C長期的に自然な加齢変化を示す、などがあげられる。一方、欠点として、@生着率が悪い(術後移植脂肪組織が萎縮する)、A技術的要因に左右され結果が不安定である、B嚢疱形成(しこり)や石灰化を起こすことがある、などが指摘されてきた。現在、米国では顔面などに対して年間約6万件施行されているが、乳房に対してはまだ少ない。
乳房への脂肪移植は80年代初頭よりBircollをはじめ散発的に行われたが、石灰化ができることが報告されたため、乳癌の診断の妨げになる可能性があるうえに美容的な増大効果が些細であるとして、否定的な意見が1987年から雑誌PRSにて複数のレターとして掲載され、米国形成外科学会の特別委員会は1989年に豊胸目的の脂肪移植を非難するコメントを発表するに至った[7,8]。その後人工物による豊胸術が標準とされるが、人工物による高頻度のカプセル拘縮(石灰化も)、リップリングなどの外科的修正を要する後遺症があるために、また乳房縮小術など他の乳房形成術においても石灰化が頻回に認められることから、乳房への脂肪移植も一部の形成・美容外科医において行われてきており、議論が耐えない領域である[8]。採取・前処理・移植技術の改良により、脂肪移植術のその施行数は増加の一途をたどっている(10年間で7倍に増加:米国ASPS統計)。こうした脂肪移植に関わる技術の進歩、また乳がんの診断装置・技術の進歩により、最近は乳房に対する脂肪移植を見直す動きが見られ[8-11] 、今後は合併症を減らし有効性を高めるための治療プロトコールの最適化が議論されていくと思われる[11]。

5. CALの概念と前臨床研究
我々は吸引脂肪の前駆細胞不足(低ASC/adipocyte比)を解消する目的で、別に用意した吸引脂肪から新鮮ASC(実際にはSVF)を採取して利用する治療法を考案し、Cell-Assisted Lipotransfer (CAL)と命名した[3,12]。遠心処理した吸引脂肪を生きたscaffoldとして利用し、新鮮ASCをそのscaffoldに接着させて、ASC/adipocyte比を改善したASC-richの状態で移植材料とする(図5)。
CALの動物実験において、移植脂肪はASCを加えたときに有意に大きく、特に周辺部における新生血管の違いが認められ、中心部の壊死範囲が小さかった。また、ラベルしたASCは移植脂肪の結合組織内や成熟脂肪細胞の間に挟まれるように生存しており、一部のASCが血管内皮細胞に分化していることが示された[3]。
 CALにおけるASCの役割は4つ考えられる。1つは、ASCが成熟脂肪細胞に分化し、移植脂肪の脂肪細胞の一部を構築すること。ASCは従来から脂肪前駆細胞と呼称され、成熟脂肪細胞と共培養すると脂肪細胞への分化が誘導されることが知られており[13]、移植後急性期の炎症や接着移植脂肪の刺激による脂肪細胞への分化は十分に考えられる。2つめは、ASCが血管内皮細胞へ分化し、急性期の血管新生に寄与すること。ASCが血管内皮細胞へ分化できることは最近の複数の研究[3,5,14,15]において確認された。3つめは、移植直後の低酸素(阻血)状態により血管新生誘導因子を放出することにより、周囲からの血管新生を誘導し、移植組織の生着に寄与することである。ASCは低酸素状態でVEGFやHGFなどの血管新生作用を持つ増殖因子を分泌することが知られている[16]。4つめは、未分化なASCの状態で移植脂肪内に存在し、組織特異的前駆細胞として来たる脂肪細胞のターンオーバーに備える。正常脂肪組織はターンオーバーが遅い(1.5〜3年)組織として知られているが[17]、移植された脂肪組織は一時的な虚血状態により虚血-再還流障害を受けるため、移植後の早い段階で組織がターンオーバーすることが予想される。この移植早期のターンオーバーにおける前駆細胞(ASC)不足が術後の移植脂肪組織の萎縮に関連しているとすれば、ASCを加えることによる萎縮抑制が期待できる。この移植脂肪の萎縮を抑える効果は複数の動物実験[3, 10,18]から示唆された。

6. CALの実際
CALはあらゆる軟部組織増大への適応が可能である。美容目的の豊胸[12]をはじめ、乳房の先天性発育不全・変形、乳癌術後の乳房欠損・変形、漏斗胸、顔面の脂肪萎縮症(Parry-Romberg症候群、深在性エリテマトーデス、強皮症など)、アンチエイジング目的の顔面への脂肪移植、ヒップリフト、その他癌や外傷後の後天性陥凹変形などである。豊胸の場合は大量の脂肪を必要とするため40kg以下の痩せた患者には向かない。
《手術方法》
1)脂肪吸引:採取部は通常は大腿(または+腹部)である。超音波やパワードは使用せず、一般的な脂肪吸引(500-700mmHg)により吸引脂肪量として1000-1500ml採取する。吸引カニューレは2mm以下の細いものは移植材料の採取には不向きで、内径3mm程度が望ましい。
2) ASC採取用脂肪の処理:まず始めの半分の吸引脂肪を細胞処理室(CPC)へ送り、酵素処理を経て脂肪部分および廃液部分よりSVFを採取する[4]。この工程には約80分を要する。
3) 移植用脂肪の処理:後半の脂肪は移植材料として処理する。700-1200Gの遠心処理により、油分・水分・血液成分を可能な限り除去するとともに、移植脂肪の体積をコンパクトにする。移植量あたりの組織増大量は処理により大きく異なる[6]。
4) 脂肪注入:処理されたSVFを遠心脂肪に加えて攪拌後、接着させ、直ちに注入に移る。室温で放置したり、機械的な処理を行うことにより脂肪細胞はどんどん破壊されていくので速やかな移植が重要である[19]。スクリュー式ディスポシリンジを使用しているためアシスタントが必要になるが、極微量ずつの注入が可能であるとともに、一気に入れ過ぎることもない。乳房に的確に層々で注入するには、長い注射針が重要で、150mmの18G針(鋭針)を使用している(図6)。乳房下溝、乳輪辺縁などの4箇所から術者が針を刺入し、注入針を少しずつ引きながら、アシスタントがプランジャーを回して細い線状もしくは点状に注入していく(図7)。移植は乳腺以外のあらゆる脂肪、および筋組織に対して行う。乳腺下の筋層など深い層から順に入れていき、最後に皮下に注入して仕上げる。術者が挿入角度や深さを少しずつ変えてきれいに注入していく。通常は乳房片側に200-300mlの脂肪を注入する。
5) 術後ケア、経過:消毒や抜糸は不要である。シャワーは翌日から、入浴は1週間後から可能である。術後は事前に用意した適切なサイズのブラジャーで寄せて上げる状態を2週間維持させる。移植脂肪は当初の1ヶ月は不安定な状態にあるので、バストのマッサージはできれば3ヶ月禁止する。半年、一年、以後一年毎に、乳房撮影、MRIで石灰化など異常がないかをチェックする。

7.臨床結果
 2003年より80例(2007年6月現在)にCALを行った。内訳は、乳房が73例(インプラントからの入れ替えを含む豊胸63例、乳房再建8例、漏斗胸2例)、顔面13例(若返り10例、顔面片側萎縮症1例、深在性エリテマトーデスによる脂肪萎縮症2例)、臀部1例(重複あり)で、1例を除きすべて女性である。患者の平均年齢は36歳、平均BMIは20と痩せている患者が多い傾向が見られた。平均移植脂肪量は片側271ml、平均手術時間は4時間15分であった。最高42ヶ月の経過観察を行った。
術後は乳房に皮下出血が見られ1〜2週間で消退する。およそ2ヶ月で萎縮が終わり安定し、それ以降の体積変化は測定誤差の範囲内であった。結果は非遠心脂肪を用いたものより、遠心脂肪を用いたものが良く、SVFをcell suspensionとして別に注入するのではなく、cell pelletとして脂肪に接着させて移植したものが良い。患者の満足度は高く、組織増大効果は全例において認められた。生着する脂肪は個人差があり、体積で100〜200ml、移植量の40〜70%程度である。患者間の個人差をもたらす要因はまだ特定できていない。これまで増大体積の定量評価ができなかったが、昨年より立位三次元測定装置を用いた経時的定量評価を開始したのでデータを蓄積して報告したい(図8)。乳房は自然な形態および柔らかい組織を示し、乳房インプラント豊胸術後に見られるような乳房の変形や拘縮は見られなかった。代表的症例を図9〜10に供覧する。
術後検査において、乳房73例中これまでに、MRIもしくはCTにて認識できる嚢疱(径12mm以下)が4例に、乳房撮影上の微小石灰化(1mm以下)が3例に認められたが、微小石灰化は乳癌の石灰化との鑑別は容易なものであった。
 
8.考察
 これまで認められている脂肪移植の欠点は、すべて遊離脂肪組織の壊死に由来するものである。脂肪移植術の数々の技術的な改良を通して、鈍的カニューレで吸引した脂肪を洗浄せずに遠心し、速やかに、細かく移植する、ことがコンセンサスに成りつつある[20]。特に移植注入技術は熟練を要し、使用するデバイスも結果を大きく左右する。
さらに脂肪幹細胞を利用することにより、生着率を高め、長期的な萎縮の予防が可能となれば、その意義は非常に大きい。我々の臨床研究において、CALの一定の安全性と有効性が確認された。有効性の評価については、さらに今後の定量的評価、コントロールスタディ、および長期的経過観察による評価が必要である。欠点のない治療法は存在しない現状から、総合的に判断し、治療目的に応じて治療法を選択することも必要と思われる。
63例中2例においてSVFを脂肪に接着させず、通常脂肪移植の後に生理食塩水に分散したcell suspension(60ml)として別途移植したが、うち1例において乳房全体、および胸骨上に広がる線維化を確認した。脂肪幹細胞の目的外への分化を避けるためにもscaffold(移植脂肪)に接着させることの重要性が示唆された。

9.おわりに
 豊胸術は米国ではこの15年間で施行数が10倍に増加し、2006年には年間32万件を超え最も施行数の多い美容外科手術となった。一方では、美容外科治療における後遺症の半数以上(著者の施設)が人工物による後遺症であり、乳房インプラントの後遺症による抜去手術も数多く行われているのが現状である。乳房インプラント患者においては、仰臥位での不自然な乳房形態、乳房の硬さや質感、健康診断や診察時のわずらわしさ、将来に対する不安など、日常生活上、実は深刻なストレスを感じている患者も多い。脂肪移植治療も後遺症を回避するためには治療技術の改善が不可欠であるが、欠点が解消できれば、自家組織である利点を十分に生かすことができる。今後の脂肪移植法およびその改良法の確立が待たれる。
一方、脂肪由来幹細胞は、脂肪前駆細胞であるとともに血管前駆細胞であることが示唆されている。最近、動脈の血管壁(平滑筋のすぐ外側)に血管新生に関わる幹細胞の存在が報告されたが[21]、この細胞はASCと同一の細胞であると思われる。広範囲の臨床分野において応用可能な血管幹細胞が吸引脂肪から採取できるとすれば、その医学的意義は非常に大きい。


参考文献

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Legends


図1.脂肪吸引回収物からの細胞の採取(文献4より改変)
脂肪吸引内容は、上層の浮遊物は破砕された吸引脂肪組織で、下層の吸引廃液は生理食塩水、血液、組織屑などの混合物である。上層、下層の双方から脂肪前駆細胞(脂肪由来幹細胞ASC)を含む間質血管細胞群(SVF)を採取することが可能である。臨床ではSVFを培養せずに使用する。


図2.ヒト培養細胞のマルチカラーフローサイトメトリー解析(文献4より改変)
ASC(脂肪由来幹細胞)、BM-MSC(骨髄由来間葉系幹細胞)、とDF(真皮由来線維芽細胞)をCD34、CD45(血液細胞マーカー)、CD31(血管内皮マーカー)とさらに1つの表面抗原(CD90、CD105、またはCD146)で分析してある。形態的にはいずれも線維芽細胞様であり近似している。ASCはMSCとDFに比べて、CD34の発現が顕著であり、ASCとMSCはCD105(間葉系幹細胞のマーカーとしても使われる)やCD146(血管内皮細胞、周細胞のマーカーとしても使われる)の発現が見られる点がDFとは明らかに異なっている。


図3.吸引脂肪と切除脂肪の形態学的比較(文献3より改変)
(ともに同一患者の腹部より採取して比較;上の段はパラフィン標本のHE染色、中段、下段は走査電顕標本の弱拡大と強拡大)。基本構造はどちらもほぼ同様であるが、吸引脂肪には大血管が非常に少ない。吸引脂肪の場合は、細いカニューレにより大血管や神経を傷つけないように採取されていることによると思われる。Bar(赤)は200μm、Bar(白)は40μm。


図4.吸引脂肪の遠心処理(文献6より改変)
(左)遠心処理後はオイル層、脂肪組織層、廃液層に分かれる。脂肪組織層は水分が分離されコンパクトになる。
(右)遠心力の違いによる三層の体積の変化。オイル層は脂肪細胞の破壊を反映する。遠心により脂肪細胞は一部破壊されるが、ASCはほとんどが生存している。


図5.Cell-Assisted Lipotransfer (CAL)の基本概念(文献12より)
吸引脂肪は切除脂肪に比し、含まれているASCの数が少ない。ASCが相対的に欠乏している吸引脂肪をscaffoldとしてASCを加えて接着させることにより、ASC-rich脂肪として移植材料とする。


図6.脂肪注入の様子(文献12より)
150mmの18G針を用いる。術者が注入針を把持して少しずつ移動させる。アシスタントはプランジャーを回して、脂肪を注入していく。脂肪を適切に移植するためにはデバイスと注入法が成否を左右する鍵となる。


図7.乳房への脂肪注入の模式図(文献12より)
注入は図のように4箇所から、注入する方向と層をずらしながら、細かく丁寧に小さい玉か細い糸を置いてくるように入れていく。乳腺を避けて、皮下脂肪、乳腺下脂肪、胸筋内などに、深い層から順番に脂肪を積み上げるように移植していく。


図8.CAL豊胸術における乳房体積三次元測定装置による測定
 23歳、女性。270mlのCALによる豊胸術を行なった。術前(左)と術後3ヶ月(右)の状態。立位において、3点の基準点により定義される標準平面より手前の体積を測定することが可能である。乳房の高さは12.4mm増加し、乳房の体積は164.9ml増加していることがわかる。


図9.症例1(文献12より改変)
30歳、女性、軽度の胸郭変形がある。CALによる豊胸術を行い、片側に約310mlを移植した。
(上段)術前、術後24ヶ月の状態。
(下段)A: 術前のCT、B:術後24ヶ月のMRI、C:術後24ヶ月の乳房撮影。特に異常所見を認めない。


図10.症例2
31歳、女性、以前に220mlのシリコンインプラントを挿入し、カプセル拘縮を起こしている。傍乳輪切開よりインプラントを抜去し、同時に230mlのCALを行った。三次元測定装置で術前、術後の評価を行ったところ、術後3ヶ月において術前より、乳房の高さは11.2mm、体積は24.2mlともに減少しているが、自然な乳房の形態と質感を実現した。(インプラントの体積を考慮すれば195mlの乳房体積の増加が見られている)


表1.吸引脂肪から採取される新鮮細胞群(stromal vascular fraction)の細胞構成 (文献4より改変)

吸引脂肪から採取されるSVFは、脂肪由来細胞(CD45-)と末梢血由来細胞(CD45+)から成る。脂肪由来細胞のうち、成熟脂肪細胞は処理過程で破壊もしくは廃棄される。SVFの中に含まれる脂肪由来細胞は不均一な細胞集団であるが、その大半はASCである。

  CD31 CD34 CD45 CD90 CD105 CD146   構成比
(平均±標準誤差)
ASCa − + − + −b − 71.0 ± 5.7%
血管内皮細胞 + + − + + + 7.3 ± 2.1%
血管周細胞 − − − + − + 3.8 ± 1.6%
血管周前駆細胞c − + − + − + 0.5 ± 0.1%
線維芽細胞ほか − − − + − −   17.4 ± 4.9%
a: adipose-derived stem cell (脂肪由来幹細胞), b: 接着培養すると+となる, c: 仮称.

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