Rejuvenationの治療には様々な手段が用いられますが、それぞれの手段は固有の目的があり、治療対象も各々異なっていおり、いくつかの治療方法を組み合わせて総合的な治療を行うことが理想的です(表2)。
外科的に手術をして若返る方法で、代表的なものはやはりfaceliftです(図1,2)。年をとると、顔の皮膚と脂肪や筋肉の間のつながりがゆるくなり、重力によって下垂しタルミが出てきます。顎のラインや鼻唇溝(鼻の両側から口の外側に伸びる深いしわ)に、とくに目立ってきます。手術によって皮膚の下の筋膜を吊り上げて余分な皮膚を切除して、重力による軟部組織の下垂や余分な皮膚のシワを取ることが一番効果があります。耳の前や後ろ、髪の毛の中の皮膚を切りますので瘢痕は目立ちません。額のシワをとる手術の場合は頭頂部の頭髪の中を切ります。この場合は内視鏡を用いることも多くあります。あわせて、皮膚の下の余分な脂肪を吸引したり、顎の下の首のタルミをとることもあります。
年をとると上眼瞼が下垂してくることはよく見られます。下垂した上眼瞼や上眼瞼の余剰皮膚のたるみには、上眼瞼の横しわにそって余分な皮膚を切りとるとともに、眼瞼挙筋の短縮術をします。下眼瞼の皮膚のシワや丸く垂れ下がったタルミも、目立たない下眼瞼縁を切って眼窩脂肪の形成や余剰皮膚の切除を行います。皮膚に傷をつけずに眼窩結膜側から眼窩脂肪を切除することもできます。下眼瞼の眼窩脂肪の少ない人の場合は脂肪注入をすることもあります。
静止時にも明瞭な眉間や上口唇の縦ジワなどには、コラーゲンの注射が良く使われます(表3、図3)。簡単にできて腫れもわずかであるため、当日から普通の生活ができます。ただ、3ヶ月から6ヶ月程度で吸収されてしまいますので、繰り返し注射する必要があります。牛から取ったコラーゲンであるため、約3%の方にアレルギー反応がでますので、必ず注射の数週間前に皮内テストをしてアレルギーが起こらないことを確認する必要があります。最近は、テストの要らないヒアルロン酸や、吸収のないポリマーを配合した製品も登場してきました。若年者のニキビ痕のくぼみ等には非吸収性の注入剤が重宝します。今後も多くの新しい注射剤が開発されることでしょう。
額などの筋緊張性の横ジワやカラスの足跡のような笑ったときにできる大きなシワは、筋肉を麻痺させるボツリヌス毒素を注射して治すことができます(表4)。この場合は、笑ったときでもその筋肉が動かなくなりますので、少し表情が変わります。3ヶ月から6ヶ月で薬の作用はなくなりますので、必要に応じて追加をすることになります。額の筋肉が緊張して生じている額の横ジワにも非常に効果があります。
一方、小じわやちりめんジワなどにはスキンリサーフェシング(皮膚の表面を新しく再生させる意味)という方法があります。この場合は皮膚を敢えてモ削るモことになりますが、電気やすりで削る方法(アブレージョンといいます)、レーザーで削る方法、そして酸などの化学薬品で削る方法(ケミカルピーリング)があります。通常の生活のままで皮膚の張りを改善したい方には多少時間はかかりますが、レチノイン酸という外用剤で治す方法があります。
高齢になるとシミも多くなりぶち模様になったり、皮膚も張りを失い、色も黄ばんできます。シミにもいろいろありますが、盛り上がってきたものは液体窒素やレーザー(炭酸ガスレーザー)などできれいに治すことができます。また、普通の平たいシミはレチノイン酸などの外用剤で治します(図4、図5)。ハイドロキノンやコウジ酸などの漂白作用のある外用剤を併用して色素沈着を取っていきます(表5)。皮膚の色や張り、つやなどの若返り効果も期待することができます。老人性のシミであれば専用のレーザー(ルビー、アレキサンドライト、ヤグレーザーなど)を使って治療をする場合もあります。
以上のように、シミ、シワ、小ジワ、タルミなどそれぞれの症状に応じて、多彩な美容治療を駆使することで外見的には10歳以上若返ることが可能です。こうした若返り治療に対する関心は高まる一方です。ただ、治療によっては、一時的な生活上の負担も伴いますので、専門の形成外科医、美容外科医によく相談されてお受けになるようにして下さい。もちろん、ご紹介した若返り治療には健康保険は適用されませんので、自費診療となります。
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