Cosmetic in Japan 美容医学への扉-東京大学美容外科-アンチエイジング
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にきび、にきび痕の治療 

東京大学形成外科  饗場恵美子、吉村浩太郎  (2003年6月)

にきびの治療

 ニキビの発生機序として重要なのは、(1)主として男性ホルモン作用による皮脂分泌の亢進、(2)毛包漏斗部の角化異常、角栓の形成、(2)Propionibacterium acnes の増加と細胞外炎症誘発物質の産生、である。そして、その治療法は、それぞれの発生機序をターゲットとしている。
 ニキビ治療は、@現在存在するニキビを治す治療、A繰り返し出てくる新しいニキビの発生を抑える治療、と2つに分けて考え、必要に応じて併用すると良い。
@ ニキビを治す治療
 ニキビの角栓を取って、膿や皮脂の排出を促すことが一番重要である。そのためには(2)に対する治療として、イオウ含有ローション(クンメルフェルト液)や、AHA(アルファヒドロキシ酸)などによるケミカルピーリング、トレチノイン治療などが行われる。ケミカルピーリングでは、施術として繰り返し行う治療(AHAであればpH1.0-2.0、サリチル酸、TCAなども使われる)のほか、AHA配合の外用剤(pH3.5-4.0程度)を毎日外用する方法も効果がある。トレチノインは(1)、(2)の両方に治療効果を認める。症状を認める部分全体に、0.05-0.1%トレチノインを薄く広範に塗布する。塗布により紅斑や疼痛を認めるため、塗布は1-2日に1回で始めてよいが、継続使用をさせる。必要に応じて濃度や使用回数を上げる。1ヶ月程度の継続使用により、皮脂分泌が減少しニキビ症状も改善する。また、わずかではあるが、ニキビ瘢痕を平坦にし、毛穴の開きを目立たなくする作用もある。膿疱が多く見られるような症例ではスキャナー付き炭酸ガスレーザーによるドリリング(0.6mm程度のスキャナーモードで穴を開けて排膿処置をする)が著効する。
 また、補足的ではあるが、(3)に対する治療を行うことができる。抗生剤の投与とビタミンCの外用投与がその中心的存在となる。外用抗菌剤としては、ナジフロキサシン含有製剤(アクアチムクリーム、ローション)、リン酸クリンダマイシン含有ゲル(ダラシンTゲル1%)などが、経口抗菌剤としては、テトラサイクリン系抗菌剤や、マクロライド系抗菌剤、やリンコマイシン系抗菌剤などが使用される。ビタミンC誘導体のローションも消炎効果があり、併用するには有用である。
A新しいニキビの発生を抑える治療 
 (1)の男性ホルモン作用による皮脂分泌の亢進、に対する治療を行うことになる。具体的には、トレチノイン治療(上記参照)とホルモン治療である。生活上のストレスを抑えるための生活指導も大切である。
思春期以降の女性患者で、難治性の症例、胸や背部など広範囲にわたる症例、月経前に繰り返し皮疹の増悪を認める症例に対しては、ホルモン治療が著効する場合が多い。ホルモン治療薬には、経口避妊薬(シンフェーズT28など)や、総合代謝性ホルモン剤(メサルモン-F)、黄体ホルモン代謝産物(ジオール)などがあるが、スピロノラクトン(アルダクトンA)による抗アンドロゲン治療が効果が高い。抗アルドステロン剤で高血圧の治療薬であるが、アンドロゲンレセプターに競合的に結合し、抗アンドロゲン作用を示す。初期投与を150mg/日とし、約1ヶ月の継続使用後より皮脂分泌の減少とニキビ症状の改善が認められる。ほぼ全例に月経異常を生じるため、プロゲステロン製剤(プロベラ)を併用した21日間の間歇投与も有用である。血中総テストステロン値が高い(0.5ng/ml以上)患者では経口避妊薬も奏効することが多い。スピロノラクトンは、男性患者では女性化乳房など副作用の可能性があるため、適応とはなりにくい。

にきび痕の治療

 ニキビ痕は美容皮膚治療において最も難しいものの一つと考えられている。患者が"ニキビ痕"と訴える場合、実際には様々な病態がある。大きく分けると、@凹凸、A赤み、B色素沈着(茶色)に分けられ、@の凹凸も、さらにA:クレーターを呈し大きなうねりとなっているもの(凹みの深さに比べて口の直径が大きい)、B:いわゆるアイスピック型(凹みの口の直径に比べて深さが深い)、C:AとBの中間型、D:肌全体の毛穴が開いたようなもの(いわゆるオレンジ皮様皮膚)に分けられる。
 凹凸に対する治療としては、(1) 全体的なアブレージョンおよびピーリング:削除する深さにそれぞれ差があるが、削除または炎症の波及による真皮膠原線維の再構築と再上皮化時の皮膚の表面の平坦化を期待する、(2)局所的なピーリング:陥凹の部分のみを融解し、その後のリモデリングに期待する、(3)filler:コラーゲン、ヒアルロン酸などを注入することによって陥没を目立たなくする、(4)その他、の4つに大きく分かれる。
 (1)は主にCタイプの凹凸に適応となる。削除する深さが深い順にdermabrasion, laser abrasion, microdermabrasion, chemical peelingがある。Dermabrasionではグラインダーを用いて真皮乳頭層から中下層までを削除する。また、laser abrasionでは、スキャナー付きCO2レーザーやEr-YAGレーザーなどを用いて、真皮乳頭層レベルまでの治療ができ、microdermabrasionは表皮剥離レベルの治療が可能である。当然、削除レベルが深ければ深いほどニキビ瘢痕の治療効果も期待できるが、瘢痕形成、
色素脱失、毛細血管拡張や色素沈着などの合併症の可能性も高くなる。しかし、治療後紅斑や色素沈着にはトレチノイン、レーザーなど有用な方法も開発され、以前よりは積極的な治療が可能になった。ケミカルピーリングやnon-abrative laserではごく表面的な治療効果であれば期待できる。
 (2)はBタイプの凹凸に適応となる。40-100%のTCAを使用し、細い針や爪楊枝などを用いて丁寧にアイスピック陥凹に入れていく。中和処置は不要で、3-4週間の間隔をおいて2-4回繰り返す。
 (3)は主にAタイプの陥凹で特に大きいものに適応となる。物理的に陥凹を押し上げることによって瘢痕を目立ちにくくする。しかし、半年程度で効果が減弱すること(ごく一部については自己組織と置換されることを期待することができる)、瘢痕の強い症例には無効なことから、症例を選ぶ必要がある。
 (4)はDタイプなどに適応となり、ビタミンC誘導体ローション、脱毛レーザー、non-abrative laser、Q-Nd/YAGレーザー(炭粉使用)、ケミカルピーリングなどを用いる。
 Aの赤みは、比較的新しい炎症性ニキビの治療後に伴うことが多く、ニキビ治療が良好であれば2-3ヶ月後には自然に軽快する。ビタミンC誘導体ローション、AHA外用剤(pH4.0)などで治療しても良い。まれに毛細血管の拡張が長期残存する例もあり、cooling device付きダイレーザー(V-beamR)が効果的である。効果を得るためには、数回の照射が必要となる。
Bについては、トレチノイン、ハイドロキノンを用いたマイルドな外用治療が著効する。詳しくは、別項を参照されたい。



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