Cosmetic Medicine in Japan -東京大学美容外科- トレチノイン(レチノイン酸)療法、アンチエイジング(若返り)
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ニキビに対するアンドロゲンの影響

吉村浩太郎

アンドロゲンは思春期のざ瘡に影響していることは良く知られています。アンドロゲンはTriglycerides(皮脂の50%を占める)の産生を促進し、これがPropionibacterium acnesの栄養源になっているとされています。
初経前に副腎の成熟がみられ、其の時期にコメドが見られると、早い初経、DHEAS(dehydroepiandrosterone sulfate)の上昇が有意に高く観察された報告があります。アンドロゲン依存性の皮脂分泌は、新生児では非常に多いのですが以後減ってゆき、再び思春期から増え始め、成人前にピークを迎え、以後減少します。女性では、皮脂分泌は閉経後に減少する傾向がありますが、男性では70歳代まであまり変わりません。年齢とともに減少するアンドロゲンレベルは皮脂腺の細胞のターンオーバーを遅くして皮脂腺の肥厚増大をもたらします。外的には、紫外線や免疫抑制(免疫抑制剤やステロイド)も皮脂腺の肥厚増大をもたらすようです。

副腎で生産されるDHEAからの代謝は、簡便に記すと以下のような酵素が関与しています。

DHEAS⇔DHEA
      ↓3β-HSD
  Androstenedione ⇔ testosterone → DHT
          17β-HSD      5α-reductase

毛嚢開口部のケラチノでは、また特にacneのところでは5α-reductase, 17β-hydroxysteroid dehydrogenase(HSD)が高いという報告があります。Acneの形成の結果なのか?、原因か?ははっきりしません。また、にきび患者と正常患者では局所の転換酵素に差はなかったと報告されています。ただ男女差は見られ、男性が女性よりも高いという結果でした。
血清では、女性ニキビ患者で、DHEAS、Androstenedine、T、freeT、DHTが正常の女性に比べて、有意に高いという報告があります。しかし、この報告では男性ではニキビ患者と正常者で有意差は見られませんでした。
別の報告では、女性のニキビ患者の21%に多毛が、81%にT、androstendione、DHEA、DHEA-S、SHBGのどれかが異常値を示しました。また、48%に生理不順が、50%に多のう胞卵巣(PCO)が認められました。ただ、ニキビの症状度合いとデータの異常の度合いには相関は見られませんでした。
一方、男性のニキビ患者を調べた別の報告では、ニキビ患者において有意に血中のLH、T、androstendioneが高く、E2、DHEA-S、17α-hydroxyprogesterone、11-deoxyCortizolは有意差は見られませんでした。男性のLHは年齢とともに減りますが、アクネ患者では遅いとしています。
女性のニキビに対して、経口避妊薬による治療の報告も多く見られます。たとえば、低容量のプロゲステロンを含むエチニルエストラジオールを投与した場合、副腎、卵巣、末梢組織由来のTの減少が観察されました。一方、高容量のプロゲステロンを含むエチニルエストラジオールを投与した場合は、副腎、末梢組織由来Tの減少が見られました。両者は遊離Tは同程度減らしましたが、SHBGは高プロゲステロン製剤の方がより減らしました。すなわち、総Tは低プロゲステロン剤の方がより減らしたことになります。臨床的には同じ程度にacneに効果があったとされています。
このような経口避妊薬によるニキビ治療は、比較的安全で、症例によっては効果が期待できますが、日本人のデータが少ないので、今後日本人による効果を確立する必要がありそうです。また、経口避妊薬に含まれているプロゲステロンには排卵抑制作用の強いものが使われており、こうしたプロゲステロンにはアンドロゲン作用が若干あるため、症例によっては悪化させるリスクもないわけではありません。そこで、われわれはエストラジオールを優位としたホルモン治療の試みを行いました。子宮内膜への影響に注意して使用していくことが必要ですが、反面より効果を期待することができるかもしれません。エストロゲンは、@視床下部、下垂体への作用によりゴナドトロピンの分泌を減らす、ASHBGを増やす、の2点において、抗アンドロゲン作用を示すと考えられます。こうしたエストロゲンに期待した治療は、抗アンドロゲン作用だけではなく、エストロゲンによる皮膚への直接作用もあるかもしれません。しかし、こうした作用についてはまだ不明の点が非常に多く、今後の研究によって徐々に明らかにされていくことでしょう。また、抗アンドロゲン治療にはいろいろなアプローチがあります(他の資料参照)。我々はスピロノラクトンの内服治療の試みを行いましたが、日本人においても女性には非常に効果が高いことがわかりました。アンドロゲン受容体結合阻害作用があり、血中テストステロンは上がり、一部はエストラジオールに芳香化されます。そのため、女性では不正出血や遅延月経、男性では女性化乳房が見られることがあります。女性ではプロゲステロンの併用によって月経をコントロールすることもできます。スピロノラクトンは使用開始後一ヶ月程度で皮脂の分泌が抑えられ、にきびもできにくくなります。血液検査では、さまざまなホルモン値に加え、抗核抗体やIgEなども測定しておくと他の影響因子についての情報も得られて良いと思います。ホルモンは遊離、総テストステロン、DHEAに加え、LH、FSHなども測定しておくとPCOの診断にも参考になります。


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