Cosmetic Medicine in Japan -東京大学美容外科- トレチノイン(レチノイン酸)療法、アンチエイジング(若返り)
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抗老化医療としてのホルモン補充療法


ホルモン補充療法とは、老化プロセスを促進するホルモンを抑制し、老化現象を後退させるホルモンを活性化させることです。抗老化医療における目的は、簡単に言えば、患者さん一人一人の生活の質を向上させ、寿命を延ばすことにあります。具体的には、筋重量、骨密度、体力、活力、有酸素運動能力の増加、気分の高揚、睡眠の改善、血糖値の低下、糖尿病治療、体脂肪の減少、免疫力の改善、疾病頻度の減少、コレステロール関連データの改善、創傷治癒力の改善、癌や心臓病の予防、肌の色艶の改善などがあります。

こうした治療で最も重要なのが患者さんの教育です。情報をきちんと与えられれば患者さんが自分の治療に関する決断が容易になるという観点から、ホルモン療法、栄養に関する様々な情報資料を提供し、生活習慣の問題の重要性を説明することが重要です。すべてのプロトコルは完全で総合的な評価方法に基づいており、その一部は来院前から始まります。患者さんの医療、栄養、運動に関する詳しい経歴、心理学的プロフィール、一般薬局あるいは処方箋を通じて服用されていたすべての薬品のリスト・アップなどです。また、患者さんの自宅や勤務先で手軽にできる採血など総合的な検査も含まれています。

始めに行う検査には次のような項目があります。全体的かつ部分的骨密度、除脂肪体重、体脂肪の測定値評価、神経機能測定(脳機能低下の早期発見のため)、体力、俊敏さ、バランス検査などです。

食事療法では、なぜ、どのようにして特定の料理の中のある食材が老化プロセスを加速させ、病気を誘発し、寿命を縮め、生活の質を低下させるか、あるいは逆に、老化抑止、病気予防、生活の質の向上に役立つ食品にはどういうものがあるかを知ることができます。その上で、運動の果たす役割、どんな運動が一番効果的であるかを学びます。さらに、どういう栄養補助食品が重要であるか、どういうホルモンが有害で減らすべきか、どういうホルモンが有効で健康な若者のレベルまで増やすべきか、などホルモン調節について理解する必要があります。低グリセミック・インデックス食事療法を実施する重要性とどのようにしてこれを自分の食生活に採り入れていくか、また、どのようにして病気予防と健康に効果的な脂肪摂取量を増やし、病気を誘発し健康に害のある脂肪を避けるかを勉強する必要があります。

ホルモン調節における目的の一つはインスリンとコルチゾール・レベルを下げることです。この二つのホルモンは老化を促進し、病気を悪化させるものです。また、生活の質の向上や病気予防に役立つ男性用ホルモン、女性用ホルモンがあります。女性の場合は、個人の必要に応じて、天然エストロゲン、天然プロゲステロン、DHEA、テストステロン、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、(and/or)メラトニン、男性の場合は、こちらも個人の必要に応じて、DHEA、テストステロン、メラトニン、甲状腺ホルモン、(and/or)成長ホルモンがあります。

抗老化医療という概念は1990年7月7日に、かの有名なDaniel Rudman博士が"New England Journal of Medicine"誌に歴史的論文を発表した時に誕生しました。Rudman博士は、61才〜81才の健康な男性に対して成長ホルモンの効果を調査しました。この条件に合う21人の男性に対して6ヶ月にわたって週3回ヒト成長ホルモンを注射投与しただけで、筋重量の8.8%増加、脂肪重量の14.4%減少、皮膚の厚み7%増、腰椎骨密度1.6%増という結果が得られました。米国国立老化研究所(NIA)とマーク・ブラックマン、ミッチ・ハーモン博士率いるジョンズ・ホプキンス大学でつい一年半前に終了した研究の中でRudman博士の研究結果は証明され、さらに広範な研究が行なわれました。その研究の中で、対照群を置いた治験、二重盲検プラセボで成長ホルモンか成長ホルモン+各々の性別に適した性ホルモンのいずれかを使って男性と女性を治療しました。Rudman博士と同じように、この研究者達も男性に関しては除脂肪体重の増加と体脂肪の減少という結果が、さらに重要なことには、女性に関しても同様の結果が得られました。成長ホルモン、エストロゲン、プロゲスチンを投与された女性は平均で体脂肪が10%減少しました。成長ホルモンとテストステロンを投与された男性は、体脂肪が約21%減少しました。また、女性は有酸素運動能が大幅に増加しましたが、男性は女性ほどの増加は見られませんでした。

NIAの研究では、すべての治療対象グループで全体のコレステロール値が下がりました。成長ホルモンの副作用は穏やかで浮腫関連のものでしたが、投与量を減らすことで解決しました。男性に成長ホルモンとテストステロンのいずれかを投与しても、PSA(前立腺の健康状態を測る血液検査の指標)は上昇しませんでした。実際、成長ホルモンとテストステロンの両方を投与された男性は、平均で見ると、PSA値が下がっています。エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、DHEA、成長ホルモン、メラトニンなどのホルモン補充療法の効果を証明する研究は他にも何十件もあります。この他にも、成長ホルモンの使用によって骨密度の増加が確認された研究例が10数件あり、その内7件が成長ホルモン欠乏症の患者に、3件が骨密度の不足以外は健康な患者に対して行なわれたものです。

成長ホルモン欠乏症の成人に対して成長ホルモン補充治療の効果が確認された研究例が、これ以外にも数多くあります。1999年8月にJournal of Endocrinology in Metabolismで 発表されたGibney氏他による研究で、10年間成長ホルモン治療を受けた患者から、除脂肪体重の増加、LDL(悪性コレステロール)の減少、心理状態の改善、アテローム性動脈硬化症の発生率の減少など、心臓発作の危険性を減らす結果が得られました。

ヒト成長ホルモンはIGF-1濃度を上げるために使用されます。IGF-1は、成長ホルモン投与に反応して肝臓で生成されるホルモンです。Aleman氏他が1999年2月に"Journal of Endocrinolopgy Metabolism"誌上で発表した重要な研究があります。平均年齢69才の25人の健康な男性に行なわれた検査で、IGF-1濃度が神経処理速度によって測定される認知機能と深い関係があることが判明しました。一方、IGF-1濃度の低さは、感情的及び心理的機能の低下と関連があることが認められました。

米国のセネジェニックス(ラスベガス)では3000名以上の患者さんを治療し、非常に良い結果を報告していますが、副作用については、男性に関しては重要な副作用が2つ、一つは睾丸がやや小さくなることで、男性の25%に見られ、これはテストステロンでよく見られる副作用です。たいていの場合、HCGという別のホルモンを投与すると元に戻ります。女性ホルモンを投与された女性についても卵巣が小さくなる副作用がありますが、卵巣は外からは見えないため気づくことはありません。もう一つ男性によく見られる副作用としては関節の違和感があり、20%(5人に1人)の発生率になっています。わずかな関節の違和感というのは成長ホルモンを投与された患者さんに時々見られますが、一週間投与をストップした後、投与量を減らして治療を再開すると簡単に治るようです。

女性の副作用では、体重の増加があります(27%の発生率)。これは恐らく筋肉量の増加によるものでしょう。成長ホルモンは体脂肪を減らすのに非常に効果的なので、筋重量が増えている状態でも、一般には体重増加を防ぎます。あとはにきびです。にきびの発生率は18%ですが、これもDHEAの投与量を減らすことですぐに解決し、一週間以内ににきびは消えるようです。他に見られる症状(副作用ではなく)としては、紅潮が女性の18%に見られました。紅潮は治療上の副作用ではなく、閉経に伴う症状と言った方がいいでしょう。これもよく見られる症状ですが、エストロゲンとプロゲステロンの投与量を調節することで解決するようです。また、18%の女性が夜中にトイレに一回は起きなければならないと報告していますが、これはホルモンやプログラム治療による副作用とは考えられず、恐らく多量の水分摂取によるものだと思われます。また、女性の13%に乳首の腫れやかゆみが見られますが、これもエストロゲンかプロゲステロンの投与量の調節によって治るようです。

セネジェニックスが報告している患者からの情報では、99%の女性が健康状態がよくなったと感じると答えています。77%がよく眠られるようになり、活力が増したと言っています。73%の女性が体力が増したと答え、68%が生産性や運動能力がアップしたと報告しています。また、68%が体脂肪が減少し、59%が記憶力が増し、59%が病気にかかりにくくなったと報告しています。一番印象的だったのが、62%の女性が性欲が増し、55%が性的能力が向上したと報告し、さらに、62%が肌の色艶、55%が顔貌が改善し、45%が筋重量が増したということです。

男性に関しては、80%が性欲の改善、60%が性的能力の向上が報告されています。70%の男性が健康状態がよくなったと感じています。83%が活力が増し、65%が生産性が上昇したと報告しています。73%が体力が増し、筋重量が増えた言っています。63%が体脂肪が減少し、50%がよく眠られるようになり、53%が病気にかかりにくくなったというころです。45%が記憶力が増したと感じ、55%が肌の色艶が、45%が顔貌が改善し、35%が慢性疾患が回復したそうです。

総括しますと、生活習慣の管理、中でも栄養、運動、ならびに適切で管理の行き届いたホルモン治療を中心とした良心的な成人用プログラムによって大きな成果を上げられたようです。こうした成果はコレステロール値、血糖値の改善から肉体組成、骨密度の改善まで多岐にわたっています。これが疾病予防や寿命を延ばすことにつながっていくでしょう。もっとすばらしいことは恐らく、男性、女性の大多数が単に気分がすぐれるようになり、生活をより楽しめるようになったことではないでしょうか。これは健康状態、睡眠、活力、生産性、性欲、性的能力、疾病頻度、肌の色艶、顔貌などの項目で改善が見られたという実感が患者さんの中で得られたからです。


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