Cosmetic Medicine in Japan -東京大学美容外科- トレチノイン(レチノイン酸)療法、アンチエイジング(若返り)
Japanese pageEnglish page
最新情報-美容医学の扉-
トレチノイン治療(レチノイン酸)
ケミカルピーリング-しみ、にきび、しわ
若返り治療-アンチエイジング治療
美容外科(美容形成手術)
ホルモン治療-アンチエイジング
症例写真
参考文献
受診の仕方-東大病院美容外科
開業医の先生方へ
しみ組織図鑑
リンク集-美容医学の扉-
お問合せ
ホーム-美容医学の扉-
Webmaster-吉村浩太郎


IGF-1とは?

東京大学形成外科 吉村浩太郎


IGF-1とは
(IGF-1: insulin-like growth factor-1; インシュリン様成長因子-1)
インシュリンに非常に似た構造を持つ増殖因子で、成長ホルモンにより肝臓や他の組織(骨格筋など)で産生されます。成長ホルモン(GH)の作用の多くはIGF-1を介したものです。ただ、脂肪を積極的に代謝する作用や、抗インシュリン作用による耐糖能低下などは、成長ホルモンによる直接の作用であり、IGF-1にはありません。一方、IGF-1はインシュリンと類似した作用を持っています。インシュリンは細胞膜にあるインシュリン受容体に結合し、IGF-1は1型IGF受容体に結合して、細胞内にシグナルを伝達します。糖尿病の患者ではこの2種類の受容体がhybridを形成して、インシュリン抵抗性の一つの原因になりますが、IGF-1はこのhybrid受容体とも強く結合し、その作用を発揮できる優れた点を持っています。
以前はIGF-1とinsulinの比較をした文献が多く見られ、それらを蛋白代謝、糖運搬、グリコーゲンやトリグリセリド合成などの面から比較検討していましたが、近年では、IGF-1の持つ筋合成、筋分化、加齢、筋損傷、筋疾患に対する作用に注目した文献も増えてきました。

骨格筋ではIGF-1には2つのシグナル伝達系があります。
1) PI3K(phosphatidylinositol 3-kinase)cascade
⇒筋芽細胞、筋衛星細胞の増殖
2) MAPK (mitogen-activated protein kinase) cascade
⇒筋環細胞の融合、蛋白合成、糖取り込み、肥大、apoptosis回避
IGF-1には 6種類の結合蛋白が見つかっており、血清中ではIGFBP-3が95%のIGF-1と結合しています。IGFBP-3の発現はGHによって制御されています。

IGF-1の受容体としてはIGF-IR(typeI IGF receptor)が知られており、IGF-1またはIGF-2と結合(insulinの500倍)します。その受容体はα2β2サブユニットからなり、αは細胞外ドメイン、βは膜貫通ドメインです。IGF-2は別の2種の受容体にも結合し、他の役割を果たします。

加齢に対するIGF-1投与
加齢により30歳からGHもIGF-1も落ちていきます。加齢によりIGF-IRの発現は新生児期より若青年までに80%減少し、加齢とともにさらに減少していきます。さらに、蛋白同化機能も落ちていきます。mRNAは落ちませんのでターンオーバーの増加とも考えられています。
高齢者では血清IGF-1は最大筋仕事量と相関があり、運動療法で多少IGFの回復がみられる報告があります。
IGF-1が臨床投与された報告では
1) GH欠乏患者:除脂肪体重、筋力、筋蛋白合成の増加あり。
2) 若運動家:GHの増加効果無し。IGF-IRの減少のため?
3) 高齢者:@18人抵抗運動とともに;効果なし。
   AGHRHを11人に6週間、運動なし;IGF-1上昇、筋力も上昇。
などの報告があります。

筋萎縮状態へのIGF-1投与
以下のような報告があります。
1) 絶食患者:筋異化をもたらす。IGF-1を蛋白、mRNAで減らす。低栄養が長く続くとIGF-1は下がる(ラット、ヒト)。
2) 敗血症患者:TNFα上昇が筋異化をもたらし、IGF-1を下げる(TNFα投与vitroでIGF-1による筋同化を妨げる)。LPS(lipopolysaccharide)endotxinやIL-1も血清IGF-1を下げる(ラット)。
3) 筋廃用性萎縮患者:筋apoptosisをもたらす。IGF-1投与や運動はこれを防ぐ。IGF-1過剰発現マウスでも無重力萎縮は見られた(受容体下流への影響?)。

IGF-1による結果的な筋重量増加が見られた臨床例
1) 熱傷患者(1998) GHとともに投与。
2) 慢性閉塞性肺疾患(1992)
3) 癌性悪疫質(1992)
4) 重症骨粗しょう症(1999)
5) 腎障害(1999)
などの報告があり、HIVによる体重減少には効果はありませんでした(1996)。

DM(糖尿病)に対するIGF-1投与
DMでは骨格筋でinsulinやIGF-1に抵抗性を出し、老化を早める傾向あります(ラット;ヒトでも少し)。
2つの糖運搬物質があります。GLUT1(膜)とGLUT4(細胞内)です。糖尿病の多くではGLUT1の発現の減少が見られます。さらにTNFαの影響があり、DMの筋ではmRNA4倍に上昇しています。受容体hybrid:insulinRとIGF-IRのhybridが肥満、DMで増加 insulin抵抗性につながるが、IGF-1はhydridとほぼ同じように結合でき機能します。すなわち、DMの筋wastingにIGF-1は有用性を保つことになります。
IGFはinsulin抵抗性DMに効く;GHを抑えるなどの作用がみられます。

筋疾患に対するIGF-1投与
glucocorticoidやHMGCoA(3-hydroxy-3-methylglutanyl coenzyme A)reductase inhibitorによるものは、IGF-1シグナル(PI3K)を障害している(機序は両者で異なる)。Glucocorticoidは上流でもIGF-1、IGF-2を減少させる(ラット)とともに、肝細胞でIGFBP-1発現を増やし筋への効果を減らします。IGF-1の筋apoptosis抑制効果も抑えます。
1) マウス筋萎縮性疾患では明らかな効果あり。
2) マウス ステロイドによる筋萎縮に大きな効果。局注でも大きな肥大効果。
3) ヒトの報告はない。
などの報告があります。

副作用
浮腫、関節痛、顎関節痛、頭痛(25-60%);ベル麻痺、視神経鞘浮腫(4%)
などが見られます。
IGF-1とIGFBP-3の複合投与で副作用軽減した報告があり(DM患者;2000年)、この併用治療は効果も大きいとの報告もあります(絶食マウス)。

局所投与方法(過剰発現)
1) アデノウィルス:高齢ラット、27%筋力増加、筋重量は不変。(1998)
2) リポゾーム:熱傷ラット、速い上皮化、体重増、筋蛋白量増加。(1999)
3) プラスミド:筋特異的プロモーターを使って、、
などの報告があります。


1つ前のページに戻る
Copyright -Cosmetic Medicine in Japan- 東大病院美容外科、トレチノイン(レチノイン酸)療法、アンチエイジング(若返り)