Cosmetic Medicine in Japan -東京大学美容外科- トレチノイン(レチノイン酸)療法、アンチエイジング(若返り)
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保湿剤と漂白剤(美白剤)

東京大学医学部形成外科 吉村浩太郎

I. はじめに
 積極的治療効果を持つメディカルスキンケアの基本的な役割は、1)機能不全の角層を積極的に取る、2)角層を取ることにより失われる角質や皮脂の機能を保湿剤などで代用させる、3)表皮角化細胞の増殖を刺激して表皮の新生を促す、4)真皮におけるコラーゲン産生を刺激し張りのある皮膚を作り上げる、5)メラニン産生を抑える、と大きく5つに分けることができる。1)についてはレチノイン酸もしくはAHAをはじめとするピーリング剤が、2)は保湿剤が中心的役割を果たす。3)についてはレチノイン酸が大きな作用を持ち、またピーリング剤の二次的な効果としても期待することができる。4)についても、レチノイン酸の長期使用により、もしくは深いresurfacing後の創傷治癒による二次的な効果として期待することもできる。5)については様々な漂白剤(美白剤)が中心的な役割を果たす。漂白剤(美白剤)、AHA、保湿剤は単独治療としてのメディカルスキンケアのみならず、皮膚のあらゆる美容外科治療に伴う補助療法やメインテナンスとして非常に重要な役割を持っている。

 

II. 外用剤の特性、使用方法

 1. 漂白剤(美白剤) bleacher (bleaching cream)

 メラノサイトがメラニンを生成する過程を阻害する薬剤の総称である。皮膚の漂白目的で使われる。その作用機序には、1)チロジナーゼ活性をその酵素産生過程で阻害する、もしくは基質を阻害する、2)メラノサイトの増殖を阻害する、もしくは細胞毒性を持つ、3)メラニン産生を誘発する炎症を抑える、などがある。レチノイン酸やAHAなどと併用することにより,効果を高めることができる。4-isopropylcatecolなど強力だが脱色素を残すものは使われなくなった。
代表的な漂白剤(美白剤)を表1に示す。ハイドロキノンは漂白作用が強いが、発赤、irritationなどを伴うことがある。通常は2-5%の濃度で外用剤として1日1回もしくは2回使用する。ハイドロキノン、アザライン酸は未認可であるため、院内調合を要する。市販されている美白剤は効果が小さく、積極的な治療としては使えないが、副作用がほとんどないため炎症を伴うときなどには使いやすい。ODTなど使用方法を工夫すれば一定の効果は期待できると思われる。

2.AHA (alpha hydroxy acids; fruit acids)

 カルボン酸のアルファ位に水酸基を持つ脂肪酸の総称である。具体的にはグリコール酸glycolic acid、乳酸lactic acidが良く使われる。角質剥離作用を持ちケミカルピーリングの主剤として利用されているが、外用剤として処方して毎日外用させることによっても一定の効果が期待できる。グリコール酸、乳酸ともに3-15%のクリーム、軟膏、ゲル、ローションなどの外用剤として院内調剤して使用する、もしくは製品も数多く市販されているので購入することができる。

3.保湿剤moisturizer

 保湿剤は、美容外科治療に伴うあらゆるスキンケアに必須のものである。レチノイン酸やAHAなどを使用する場合角質を取ることになるため、皮脂と角層の持つ水分保持機能やバリア機能を保湿剤で補うことが不可欠である(ニキビ治療では過度の使用はニキビの再発を促すので注意を要する)。

 角質の機能は天然保湿分子(natural moisturizing factor、NMF)と細胞間脂質(セラミド)に大きく依存している。保湿剤には大きく分けると、水溶性成分(グリセリン、ヒアルロン酸など)による吸保湿性付与を目的としたものと油性成分(ワセリンなど)による閉塞性付与を目的としたものがある。保湿剤として使われる保湿成分には、グリセリンやプロピレングリコールなどの多価アルコールや、尿素やアミノ酸を中心としたNMF、真皮結合織成分であるヒアルロン酸、水溶性コラーゲン、ヘパリンノイドなどがある。これらの成分は角層に入って、もしくは角質上に付着して水分を保持する。一方、ワセリン、セラミド、オイル(ツバキ油、ベビーオイルなど)などの油脂は皮膚の表面に膜を作ることで、保湿効果、バリア効果がともに期待できる。

 医薬品として処方可能なものとしてはヒルドイドソフト、ビーソフテンローション(ともに0.3%ヘパリンノイド含有)やウレパール、ケラチナミン (それぞれ10%、20%尿素含有)、白色ワセリン、ザーネ(ビタミンA油含有)などがある。その他、化粧品・医薬品各社から店頭市販されている製品は数多く、使用感の良いものが多い。実際には含有成分自体の有効性は小さく、塗布される基剤によるところが大きいものが多い。ニンニクB1エキスや米発酵エキスなどを有効成分として用いた保湿入浴剤も医薬部外品として市販されている。

 保湿剤は患者自身が頻回に塗布するものであるから、医師が皮膚症状、使用部位に応じて適切な保湿剤を選択、組み合わせて洗顔、化粧とともに使用方法を指導する。

 

IV.合併症、後遺症、トラブルとその対策

 ハイドロキノンはirritationや発赤がみられることがあるが、中止により直ちに改善する。高濃度を長期間使用することにより、色素異常をもたらす例があることが報告されている。

参考文献
1) 吉村浩太郎 レチノイン酸を用いたfacial rejuvenation?治療に必要な外用剤、スキンケア? 形成外科, 42: 801-806, 1999.
2) 芋川玄爾 スキンケア用品/美白剤 スキンケアの実際 文光堂、pp42-44、1999.


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